妬こうよ、そこはさ。

「……いや。ええと、気分みたいなもの」

「へえ」


律儀に返事をくれた彼女に一つ首肯してみせる。


彼女はいつもそうだ。どんな質問でも、必ず何か答えてくれようとする。


そういう、ささやかで気付きにくい彼女の細やかな姿勢が、俺は結構好きだった。


好きだとか、君がいいんだとか、そういういわゆる甘い台詞を口にするのは苦手だけど、心内ではちゃんと思っているのだ。


思うばかりで上手く伝わっていないことも、女性は言葉が欲しいものだということも、知っている。


それでもやはり口に出すのは難しい、と言って逃げるのは、少々甘え過ぎだろうか。


君が好きだ——甘酸っぱくて、素直で、俺には言いにくい、そんな照れくさい言葉を、……久しぶりに言ってみようか。


回りくどくて分かりにくい、俺はそういう性分だ。伝わったらいい、くらいの心持ちで、声に出してみようか。


ひらめきはなかなかに名案な気がした。


静かに息を吸う。


黙り込む彼女に一瞬目をやって、目に入った服装に不機嫌になってしまいそうだったので、またすぐに視線を本に落としてから、呟く。


「……その格好だと寒いと思う」


何とか捻り出した呟きは、俺にしては頑張った方。


伝わったか確認するために彼女を流し見る。