思わず眉根が寄った。


見慣れない格好は、無精癖のある彼女の精一杯のお洒落だと、気付いてしまって。

すらりと伸びる脚が、妙に艶かしくて。


止まない慌てた準備の音が、嫌でも耳に入って残る。


「…………」


自分は妬いているのだ、と思った。


……お洒落したのを見せたい相手が女性なら、まだいいんだけど。


準備が終わったらしい彼女が俺の前に立つ。


悔しさを顔に出してしまいそうで、本から視線をずらせない。


先ほど横目で確認しておいた彼女は、とても綺麗だった。


まるで——今から大事な男と会うと言われたら納得するほどの、気合いの入りようで。


「買い物行くけど、何か必要なものある」

「いや、大丈夫」


即答する。


何買うの、なんて聞けない。これ以上口を開けば、余計な発言をする予感があった。


たとえば、本当に買い物なのか、とか。


……そんなことを言うつもりはない。言いたくない。


これ以上何か言ったら、嫉妬しているのが容易に分かってしまう。