妬こうよ、そこはさ。

何度目かの応酬の後、彼が疲れたように目を伏せる。


謝罪はするりと素直に出てきた。


「……ごめん、なさい」

「…………」


返事がないことが、私を焦らせる。


そう、まずもって、自分でもよく理解できていないことをしてはいけなかった。


そんなの、誰だって、それこそ小さな子どもだって教わっている。


ごめんなさい、ともう一度謝る。


「…………」


やはり返答は沈黙に代えられ、静寂が耳に痛く響く。


黙り込む私たちを遮って、彼のスマホが着信を告げた。


ちょっとごめん、と一旦リビングを出る彼。


後ろ姿を目で追いかける私に、相手と話したまま、断りを入れた。


「ちょっと出てくる。昼飯は作るし、間に合うように戻るから」


呆れられたのか。

それとも本当に用事があるのか。


でも、用事があるならなるべく伝えようというのが我が家の決まり。


そして私は、そんな話は聞いていない。


「……いってらっしゃい」


急に入った用事なら、いいな。


呆れられたんじゃないのなら、まだ救われる。


「行ってきます」


私の見送りが力ないのにも気が付かずに、彼が足早に出発する。


パタン、と。


閉じた扉がやけに寂しげに鳴った。