妬こうよ、そこはさ。

今だ若い俳優さんが話しているのを完全に忘れて、放置していたら。


「なあ、これ見てる?」


ちらりちらり、嫌そうに見遣る彼から確認を受けてしまった。


そういえばそうだった。


好きと言ったのは嘘だから、思わず意識から外してしまっていた。


でも彼にああ言った手前、この俳優さんが好きなんだ、という感じの雰囲気をもう少し出しておくべきだっただろうか。


「ああ、ごめん。消すね」

「うん、早く」

『これで快適! さあテレビの前のあなた、ぜひご購』


ポチ、と、騒音を流すテレビを消す。


重大事を考えるのは静かな空間が適している。


しばらく頭をひねっている間に、彼は細く溜め息を落として、読書を再開していた。