妬こうよ、そこはさ。

鼻を赤くして帰ってきた私が熱湯のような紅茶を飲んでいるのを見てとると、馬鹿、とひどい感想を述べて、彼は暖房の設定温度を上げてくれた。


でも、注視したその姿に、ヤキモチのような感情は見受けられない。


……ねえ旦那さん、どれだけ冷静なの。


なかなかに鉄壁な彼に少々呆れながら、作戦を考える。


とりあえず、テレビをつけよう。作戦を思いついたのはテレビからなのだ、作戦内容だって思いつくかも分からない。


「テレビつけていい?」

「いいよ」


本にしおりを挟んでから顔を上げて、頷いてくれた。


いささか速まる鼓動を抑え、リモコンを押す。


画面の向こうでは、今人気なイケメン若手俳優が、きらきらしい笑顔を振りまいている。


面白くもないのに笑えるなんて、面白くたって上手く笑えやしない私たちとは違う表情筋、多分発達した何かを持っているに違いない。


おお、と目をすがめ。一つ、妙案を思いついた。


作戦三。『あの人格好良いと言ってみる』。


「あの俳優さん、格好良いよね」


結構好き、と呟いた私を、彼はゆっくり振り向いた。