妬こうよ、そこはさ。

少々絶望的な心持ちで見つめ、それと分からないようにこっそり溜め息を落として、何とか気を保ちながら、言い訳じみた返答をようやく口にする。


質問に答えないのは主義に反した。


いつも通りのことを、装ってでもいつも通りにしなければ、怪訝な顔をされてしまう。


作戦が露呈するのは本意ではない。


「……いや。ええと、気分みたいなもの」

「へえ」


私の苦し紛れをあっさり認めて、彼は一つ首肯。


何となく気になったから聞いてみただけで、理由なんてどうでもいいのかもしれなかった。


そもそもこの作戦自体、彼の性格を鑑みれば無理があるのかもしれなかった。


黙り込む私に一瞬目をやって、またすぐに視線を本に落としてから、彼が呟く。


「……その格好だと寒いと思う」

「…………」


ええと、これは。


喜んでいいのか、悲しめばいいのか。


どう受け取るかを決め損ねて、私はただ見つめ直した。


声色が平坦なので真意が分からない。


本当に寒そうだから、という私のいち家族としての心配からなのか、

露出が多い服で出て欲しくない、という夫としての心配からなのか。


分からないから、結局問うしかない。