妬こうよ、そこはさ。

朝ご飯の片付けをして、掃除をしっかりしてしまうと、後は特にすることがない。


一緒に出かけるのも楽しいけど、私たちは休日の大部分をお互いにのんびりする時間として割り振ることにしている。


ヤキモチを妬かせよう作戦を実行するべく、私は本を読む彼の前にすっくと立った。


作戦一、『買い物に行くと言ってみる』。


一見何のへんてつもないことに思えるけど、見た目に注目して欲しい。


私は意気込んで断りを入れた。


「買い物行くけど、何か必要なものある」

「いや、大丈夫」

「…………」


彼は本から顔を上げもしないで即答した。


ちらともこちらに目を向けてくれなかったのだから、ひどい。懸命に考えた服装の意義は無に帰した。


……頑張ってお洒落したのに。


どうしたの、くらい言ってよ。滅多にお洒落なんかしないのに、って思おうよ。


思い切り出鼻を挫かれて、作戦は失敗に終わってしまった。

でも、行くと宣言してしまったものだから、出かけない訳にもいかない。


「……行って、きます」


………どうしよう。何買おう。


玄関を足取り重く出る。


行ってらっしゃい、とこれまたあっさり見送られながら、私は心中頭を抱えた。