腹の底から絞るように、ようやく出た声。


その兵にゆっくりと歩み寄り、颯が鞘から刀を抜いた。


「俺がもう一度眠らせてやろうか?」

「よせ。所詮、なにもできやしない」


由羅の言う通り、兵は刀を構えたと思ったら、そのまま膝から崩れ落ちて意識を失った。


その姿を見て、颯は刀を鞘に納めた。


そして2人は、静かにその場を去ったのだった。



“黒蝶”…。