「今、俺の目の前にいる人。それが、俺の想っている人だよ」


顔が熱くなる。

ということを、由羅は初めて体験した。



「黒蝶の正体は、椿。捕らえる理由なんてないだろ?」


そうして竜之助は、また優しく微笑んだ。


どうして竜之助は、黒蝶という敵を前にして、穏やかな心を保っていられるのだろうか。


由羅は、ついさっきまで竜之助を殺そうとしていたのに。