竜之助も、死への恐怖や痛みを感じる前にあの世へ逝ける。


由羅は、刀に手をかける。


…しかし、それを引き抜くことはできなかった。



正体がバレた以上、殺さなくてはならないのに…。


…でも、なぜだろう。

竜之助だけは、殺したくないと思うのは…。



由羅は刀を鞘に収めたまま、闇の中へ消えていった。


それは、静かな月夜のことだった。