颯の笛の演奏と由羅の舞が始まると、決まって最前列で目を輝かせて見ていた。


そんな市からのお願い。

持っている着物が少なく、地味な色しかないため、由羅が舞で着ているような鮮やかな色の着物がほしいと。


しかし竜之助の家は、新しい着物を買う余裕はない。

それは、市も幼いながらにしてわかっていた。


だから、ほしいものがあっても我慢するしかないのだと。