さて何気に濃ゆいお盆も今日で終わり。
 お供えをまとめて、祭壇を片付ける。

「後は送り火を、お墓に持っていくだけだけど」

 暑いからもうちょっと日が落ちてからにしようと、相変わらず私はクーラーの効いた部屋でごろごろしている。

『ほんにお前は、だらしのない。昼間っからそんなごろごろするな』

 相変わらず仏間には、微妙にエコーのかかった低い声が響く。
 それも今日でお終いか。

 私はちらりと、視線を動かして八郎を見た。
 このイケメン幽霊とも、今日でお別れ。
 ああ、八郎が死んでなければな。

 そう思った瞬間、ちょっと八郎の口角が上がった。
 あ、ちくしょう。
 また考え読まれた。

「ちょっと。いくらあっちの世界の住人だからって、勝手に人の頭の中覗かないで。プライバシーの侵害っていうんだよ、それ」

『覗こうと思って覗いておるわけではない。お前が大声で考えるから聞こえるだけだ』