「それだけじゃねえだろ」

「伊織?」

扉の方をみると、怒った顔の伊織がたっていた。

そのまま皆に詰め寄ると、皆の襟首をつかんだ。

「お前が俺達にそれを黙ってたせいで咲がどうなった?それにあの時俺がいなかったらお前も咲も死んでたかもしれなかったんだぞ!!」

「わかってるよ。話すから手、離せよ。バカ犬」

犬?

伊織が離すと、皆は服の崩れを直した。

「えっとねぇ・・・咲、昔初めて会ったときのこと覚えてる?」

言いにくそうに皆が言う。

「え、ああ、皆が頭の上に落ちてきて━━」

「それで咲の手噛んじゃったよね、俺」

「そういえばあったねそんなこと」

「その時、既に仮契約は済んじゃってたんだよね」

「仮契約?」

「うん。主人と隷属の仮契約」

「???」

「隷属ってのは吸血鬼のエサもしくは伴侶とも言う。そして今回、皆のバカは本格的にお前の血を啜った。これで契約完了。要するに咲、お前はもう人間じゃない」