謝りながらも呆れ顔の如月くんは、鼻を押さえる私を見下ろして、クッと笑いを堪える。


「まだクリスマスじゃねーぞ」

「真っ赤なお鼻のトナカイじゃありません」


涙目のままつっこむと、彼は笑いながら私の手を引いて事務所の中に入らせてくれた。

その手の力がなんだかすごく優しくて、温かくて。

パタンとドアが閉まると同時に、私の胸もドキンと波打った。


如月くんはふわりと黒髪を揺らし、壁を背にして立つ私の顔を覗き込む。


「ケガはしてねぇな」

「う、うん」


眼鏡を外していても、毛穴もない綺麗な顔がはっきり見える。

そのくらい近くで、彼はまだ私の顔をじっと見つめている。


「? 如月、くん……?」


な、なんか長くないですか?

そんなに見つめられると、思うように息ができなくて酸欠になりそうなんですが!

ドキドキしながら固まっていると、如月くんはやっと口を開いた。


「黒くなってるぞ、目の下」

「へっ!?」


黒い? 目の下?

ってもしかして、マスカラが落ちてきてる!?

やだー、みっともない顔見られたくない!