「いいんだよ、文ちゃん。慰めるなんて性に合わないよ」

「あたしがすっごい冷たい人に思えるようなこと言うんじゃない」


ぐしぐしと涙を拭いながら言う私に、文ちゃんは口の端を引きつらせてつっこんだ。

でも、落ちてきたマスカラをティッシュで拭いてくれる彼女は本当に優しい。

子供みたいにされるがままでいると、文ちゃんはこんなことを言う。


「だってさ、琉依くんとのこと話してて如月くんが怒ったってことは……理由はアレしかないような」

「アレって?」

「もー菜乃は恋愛小説ばっか読んでるくせに、自分のことになると疎いんだからー」


キョトンとする私に文ちゃんは呆れ顔だ。

理由って何だろう。それがわかれば苦労しないですよ……。


ムズカシイ顔をしていると、文ちゃんは腰に手をあてて力強く言う。


「とにかく、ここで諦めるのはまだ早いよ! あたしが何か作戦考えてあげるから」

「……ありがとう」


不思議と説得力があって心強い彼女の言葉に、私も少しだけ力をもらえた気がした。


初恋はわからないことだらけで、引き際すらわからない。

だから、まだ諦めなくてもいいのかな──。