禁断のプロポーズ

『思い出したよ。

 君のお母さんを淫乱女と罵ってたのは、専務の母親じゃなくて、同じ秘書室に居た社長の奥さんだよ』

 克己が昨日、酒を呑みながら言っていて、夏目はその言葉を流していた。

 えーと?

 お母さんと関係があった人は、本当は一人だったってこと?

 お姉ちゃんは、社長の子供だったかもしれないんだよね?

 私はーー お父さんの子供かも。

 いや、私が出来た頃には、もう離婚寸前だったと聞いたような。

『待て。
 お前は未咲のーー』

『愛してるよ、未咲』

 あのとき、聞こえなかった夏目の小さな囁きが、今、何故かはっきり、頭の中で再生された。

『愛してるよ、未咲。

 お前が例え、何者であってもーー』

 視線で夏目を探すが、消えた廊下の隅にも居ない。

 社長は、にこにこと、やけに微笑ましげに自分を見ている。

 夏目さん……。