禁断のプロポーズ

「お前の母親もああ見えて、素っ頓狂だったよ。

 大事なお客様の前で、仕出しをひっくり返してみたり」
と思い出したように笑い出す。

 そっくりだ。

 さすが、親子だ、と思い、聞いていた。

 っていうか、まさか、同じ感じに仕出しをひっくり返したから、智久の嫁に選ばれたんじゃあるまいな、と思う。

「まあ、智久とのことはゆっくり考えたらいい。

 では、会社のためにこれからも頑張って働いてくれ」
と話は締め括られた。

「ありがとうございました」
と深々と頭を下げて出る。

 夏目が入れ替わりに、失礼します、と入って言った。

 それを見送りながら、家でのラフな夏目さんも好きだけど、やっぱりスーツ着てると一層格好いいな。

 ずっと見てたいから、やっぱり、結婚しても、仕事辞めたくないかも。

 頑張れって言われちゃったし、と呑気なことを考えていた。

 母のことは、女にとしてはどうかと思うが、仕事の上では尊敬している。

 たまに秘書室で母の残した資料やマニュアルなどを見ると、よく出来てるな、と思うし。

 その筆跡を見ていると、懐かしくて涙が出そうになることもある。

 いや、生きてるけど……。