目を覚ますと、夏目は起きていた。
うつ伏せになり、なにもない畳を見ている。
「どうかしたんですか?」
と訊くと、こちらを見、
「いや」
と言ったあとで、そっと髪を撫でてくれる。
微笑みかけると、
「……愛してるよ、未咲」
と言った。
なにか含みがあるように。
その言い方が似ていたので、思わず、
「なに智久さんみたいなこと言ってるんですか」
と言ってしまい、しまった、と思った。
「未咲……」
「いや、すみません。
本当になんでもないです」
と未咲は布団に潜ったが、その布団を剥がされる。
露わになった肌に、
「なんですか、もうっ」
と照れて、それを被り直すと、今更、と鼻で笑ったあとで、夏目は言った。
「よく考えたら、結婚って、お前が凄い勢いで言ってきただけだったな。
俺も言った気がするんだが、なんだかお前に比べて、インパクトが薄い気が」
と言う。
「まるで猛牛が突進してくるみたいだった」
と、ろくでもないことを言う。
乙女のプロポーズをそんな風に言うとは。
まあ、あのときは、勢いと策略に満ちていただけだったが、と思っていると、夏目は、
「今度、俺からちゃんとプロポーズさせてくれ」
と言ってきた。
近づく夏目の顔に目を閉じる。
夏目は口づけながら、小さく言った。
「愛してるよ、未咲」
そのあとの言葉はよく聞こえなかった。



