夏目の携帯にかけたが、出ない。
仕事中なのだろう。
急いで、隣のビルに渡ろうとしていると、克己と会った。
「お嬢さん、お急ぎだね。
あっ、もしかして、結果出た?」
「はいっ、たぶんっ」
じゃあ、僕も行こう、と何故か、克己もついてくる。
「夏目と兄妹だったら、僕を本気にさせてくれるんだったよね」
「そんな約束してませんからね」
と言ったあとで、あ、そうだ、と思い出す。
「そういえば、智久さんが教えてやれって言ってたんですけど。
うちのお母さん、死んでませんからね」
えっ、と克己は固まる。
「相変わらずな人なんで、一人でふらっとどっか行っちゃってるだけなんで」
そうかあ、と克己は頭を掻いている。
「気になりますか?」
と言うと、まあ、ちょっと、と言う。
「君のお母さんのことを淫乱女とか言う人も居たけど。
結局、そのくらい魅力があったってことだよ。
いろんな人と噂たったけど、本当なのは、一人だけだと言ってたのを聞いたことがある」
「そうなんですか」



