禁断のプロポーズ

 
 

 外に出ると、長机にすがった桜が腕を組み、こちらを見ていた。

「な、なんですか」
と言ったときに気がついた。

 さっき、智久が莫迦なことを言ったときに、既に扉が開いていたことに。

「いや、あのー……」

 冗談だって言ってましたよ、と言おうとしたとき、桜が言う。

「ねえ、あんた、殺してもいい?」

 殺し屋よりストレートだな、と思いながら聞いていた。

「冗談よ」
と桜は派手に顔を背けて言う。

「私、本当は私に気のない男は嫌いなの。

 存在しないと思いたいわ、そんなもの」

 そ、そうですか。

 まあ、確かに、あんまり、そんな男は居ない気もするが、と思っていた。

 桜みたいな匂い立つような美女に言い寄られたら、大抵の男は、ふらふらっと行ってしまうことだろう。

「でも……、私が専務を二千万で買いたかったーっ」

 桜が発作のように、わからないことをわめき出したので、

「ちょっと失礼しまーすっ」
とだけ言って抜け出した。