禁断のプロポーズ

 でしょ? と言うと、
「そういう意味じゃない」
と言われた。

「DNA鑑定のことじゃない。
 あれはもう諦めた」

「諦めた?」

「鑑定を受けると言ったあとの、あの三人の態度を見てて、俺は社長の子かな、と思ったんだ」

 結果を見るまでもない、と素っ気なく言う。

「やっぱり、本人たちには、なんとなくわかるんじゃないか」

「……そうなんですか。

 じゃあ、やらなくてもよかったですね」
と言うと、

「それは、そういうもんじゃないんじゃないか」
と横目に見て、言われる。

「だが、今、俺が言ったのは、そのことじゃない。

 俺が知りたくなかった真実は、志帆のことだ」

 ようやく、彼は姉のことを名前で呼んだ。

 今まで、彼の中にあるわだかまりが、その名で呼ばせなかったのだと気づいた。

「こんなことを言ったらお前は怒るかもしれない。

 でも、俺は、志帆が殺されていてよかったと思ったんだ。

 ……自殺じゃなくてよかったと」

 俺は心弱い人間だからな、と言う智久の腕になんとなく触れる。

 自分のせいで、志帆が自殺したのかもしれない、と思うことに、彼は耐えられなかったのだろう。