禁断のプロポーズ

「もうどうでもいいわ」

 伶奈が低い声で言う。

「どうでもいいわ。
 もうやっちゃったんだもの。

 嗅ぎ回るあんたも殺せば、それで終わりよ」

 伶奈はナイフを握る手に力を込めた。

 自分を狙ってきた男より、遥かにぎこちない。

 だがそれ故に、素人にしか出せない迫力があった。

 伶奈は密室の壁に未咲を追い詰め、肩を掴む。

 未咲の目線を見、
「監視カメラ、当てにしてるのなら、無駄よ」
と言った。

「さっき差し入れ持ってって、切って来ちゃったから。

 この時間、ちょうど警備員の交代の時間でダレてるのよね」

 ああ、そっか、と伶奈は実に親しげに微笑む。

「新入社員さんだから、知らないわよね?」

 そう言いながら、ナイフを掴んだ右手を未咲の腹めがけて、突き出してきた。