「五十万当たりました」
「なに無表情に言ってんだ」
晩ご飯のとき、夏目にまず、それを報告した。
「あげます」
と可愛い封筒に入れた一万円を鞄から出して渡す。
「いらん」
と言ったあとで、
「五十万も当たったのに、なんでそんなにテンション低いんだ」
と言ってくる。
「五十万もとか言っていただいてありがとうございます」
「誰かに五十万なんて、はした金とでも言われたか」
普段なら、ぎくりとするところだが、今日はそのまま流してしまう。
「そうなんです」
「広瀬か」
「そうなんです。
あの人は意地悪の極みです。
そして、庶民の気持ちがわかりません」
「そう思うのに、何故、お前は広瀬と居るんだ?」
え? と未咲は顔を上げた。
夏目は魚を綺麗に解体しながら、
「お前と広瀬のことは知っている」
と言い出した。
「……どうして?」
と言うと、
「カマかけただけだ」
と言われた。
しまった……と思ったが、そんなに感慨もなかった。
夏目にあの事実を告げるか。
ずっと迷っていた。
そちらの方が気になって、あまり他の感情は湧いてこない。