禁断のプロポーズ

「不安といえば、私も不安なんですが」

 中に入ろうとした夏目にそう呼びかける。

「なにがだ」

 未咲は少し迷ってから、あのイヤリングを見せる。

「これ、私が寝起きしてる部屋に落ちてたんですけど」

「……ばあさんのか?」

「そんなわけないじゃないですか」

 本気か?
 ボケなのか?

 誤魔化そうとしてるのか?

 夏目の表情は相変わらず読めない。

 夏目は石のついたそのイヤリングを指でつまみ、
「埃はついてないな。

 お前が持ち歩いてるうちに落ちたのか?」
と訊いてくる。

「いや、最初からあんまりついてませんでしたよ」

 ふうん、と眺めたあとで、こちらの手に返し、
「水沢さんの悪戯じゃないのか?」
と言ってくる。

「うーん。
 でも、あの日、貴方もあの部屋に泊まってましたしね」

 まあ、隙を見てやりそうではあるが。

「実は、それ、おねえちゃんのイヤリングなんだそうです」

「そうなのか」

「本当に知らなかったんですか?」