禁断のプロポーズ

「社長夫人になってみるか、未咲」
と冗談めかして言われ、

「課長の奥さんで充分です」
と答えると、

「ほんとにあいつと結婚する気か?」
と訊かれる。

「今のままなら、押し流されて、そうなりそうです。

 専務、もしかして、花嫁の父の心境ですか」

「だから、何故、俺を年寄り扱いする。
 夏目とそう年は変わらないぞ」

「だって、ずっと私の面倒見てくれてたじゃないですか」

「金を与えただけだ。
 お前は勝手に生きている。

 縁日でとった金魚より手がかからなかったぞ」
と大真面目に智久が言うので、笑ってしまった。

「専務も子供の頃は縁日とか言ってたんですね」

「だから、家で専務はやめろ。
 職場みたいで、どっと疲れるから」

「あら、そうなんですか。
 仕事と職場が好きだから、泊まり込みたいくらいかと思ってました」

「他に趣味がないだけだ」

「専務は……あ、すみません。

 でも、職場でうっかり、智久さんとか言ったら、さ……」

 桜さんに殺されます、と言いかけて、言葉を呑み込む。

 勝手に桜の想いをしゃべっては、桜に悪いと思ったからだ。

「……佐々木さんに殴られますから」