『先輩、卒業おめでとうございます』



千菜さんの髪が揺れる。



『先輩のくれた金平糖の味、忘れません』



震える涙の声で。

千菜さんの演技は気づけば完璧なもので。



そこにあるのは、愛しい人を送り出す真摯な姿。

まさしく恋をする少女。



『ずっと、……忘れられない』



ああ、やっぱりすごい。

千菜さんは、すごいよ。



『先輩、大好きです』



そう言って、笑った。

その表情があまりにも柔らかく甘く、愛おしくて。

僕はなぜか無性に泣きたくなってしまった。



目を逸らすこともできないまま、彼女の目標が達成されたことに喜びを感じる。



千菜さんは、他の誰とも違う。

それは、そう、ひときわ輝いている。



まるで砂糖でできた星のような、やはり金平糖のような存在だ。



『スターになりたい!』



いつかの彼女の言葉が頭を過(よぎ)って、僕は小さく笑う。