ごめんね、と金原さんに口々に声をかける周りの人はどうしようもなくくだらない存在だ。

深く考えず、ただ彼女の機嫌を伺っているだけの言葉には色がない。



扉から手を離せずにいると、視界の端に他クラスの女子がチラつく。

はっとして目をやると、なぜかびくびくしていたが、中に入りたい様子がわかった。



思い切って、ガラリと戸を開けた。



突き刺さる視線は驚いたあとばつが悪そうで、そして同時に苛立ちつつもあって。

あんな風に言うくらいなら堂々とすればいいのに、ばからしい。



用があったのだろう、隣に立つ少女にだけは少し申し訳ないと思う。



「千菜ちゃん、あの、今大丈夫……?」

「うん! どうかしたー?」



名を呼ばれて、金原さんが廊下へと足を進める。

その瞳の中には動揺もなにも感じられなく、いつも通りで。



僕の隣を抜けてもわざとらしい言葉は交わさない。

そして友だちらしい、彼女に笑いかける。



僕たちの間にはなにもなかった。



自分の席について、机の中のものをリュックに詰める。

その間も教室にはなんとも言えない空気が流れていて、僕は素早く済ませてそこを出る。



ようやく呼吸ができるようになった感覚に陥り、深く深呼吸。