気づかないで欲しかった。

自覚しないで欲しかった。

その、胸の中の、恋心に。



だってそれの意味するところは、僕の失恋。



恋によって、一層輝く君を見ることを恐れていたんだ。



「僕は千菜さんに憧れてもらえるような人間じゃないよ」



こうなることをわかっていたはずなのに。



僕は君の力添えをしたかった。

「ありがとう」と言われたかった。

君に笑顔を向けられたかった。



ごめんね。

その願いが叶ってなお、僕はもっと多くのことを求めていたよ。



君のそばにいたかった。

ずっとずっと、いたかったんだ。



「本当は、君に恋なんて教えたくなかった」



僕ってばかだなぁ。

自分でしでかしたことのくせに、こんなに後悔しているなんて。



……ばかだなぁ。



「なんで……」



そんなの、決まってるじゃないか。

君は1度だって感づくことはなかったけど。



「僕は千菜さんが好きだから」



そう言えば、彼女は目を見開いて、え? と声を零す。



僕はもう、今までと同じように彼女のそばにいることはできなくて。

その場から、逃げ出した。






そして、そのまま言葉を交わすことはなく、1週間が過ぎていった。