彼女が僕の特別を増やしていって、僕は幸せだと思う。



なのに、心は貪欲だ。

もっともっとと求める気持ちが抑えられなくなる。



────君に、僕を好きになって欲しい。



だけどわかっているんだ。

それは無理だと、叶わない願いだと。



だって君は、先輩のことが好きだから。



僕にはないものをたくさん持っている千菜さん。

そんな彼女より大人で、憧れてもらえるような人柄である先輩。



そんなの、どう頑張ったって敵わないじゃないか。



「千菜さんは……」



なにが言いたかったのか。

自分でもわからないのに名を呼んだせいで、彼女がなに? と不思議そうにきょとんとしている。



「金平糖が似合うね」



誤魔化すように呟いた。



自分で口にした言葉だけど、ああ、本当にその通り。

君は、金平糖に似ている。



どこまでも、眩しい存在だ。



千菜さんは僕の言葉に反応して、頬をわずかに染めて、胸に手を当てる。

首を傾げるその仕草の意味もわからず、僕はただ哀しく笑った。