君に声届くまで。



「はーい、じゃあ教科書205ページね〜」



始業式とHRが終わり、
席に着くやいなや、

数学担当の教諭が教室に入ってきた。



私はスクバをゴソゴソと漁りながら考える。



初日から数学の授業なんて、
うちの学校おかしいよ。

ほんと、おかしいよ。


おかし……い…。


私はバッとスクバの中身を覗く。


筆箱にノートに手帳にポーチ。


いやいや、教科書入ってないんですけど!?



「芹沢さん、何してるの?教科書出してバック下げなさいね」


数学教諭の鋭い視線が私を射抜く。



「は…はい…」



私は渋々スクバを下ろした。


助けを求めて希望と瞬を見ると、
口を押さえて俯き肩を震わせていた。


瞬からも希望からも、
微かに、クスクスという声が漏れている。


性格悪…!


うっすらと涙を浮かべたまま
前に向き直ると、


明君の方から、私の机にコロコロと丸められた紙が転がってきた。


なんだろう?


訝しげに思って紙を開くと、
細々とした文字で


『机くっつけて』


と書かれていた。