君に声届くまで。




『せりざわ あきら だよw』



その文字に、
ぶわっと私の顔が熱くなる。



『ごめん…!
私も、芹沢なんだ!芹沢 虹心。
明君って呼んでもいいかな?』




『うん。明でもいいけど。にこ?』




「あっ、すごい」




私は、明君の語彙力に感嘆の声を上げる。


大抵の人は、
私の名前をにじこって言ったりするから。




『そう!にこ!すごいね!読み間違えないなんて!』



私は画面から顔をあげて、
キラキラした目のまま明君を見つめた。



『そうかな?ありがとう。いい名前だね』



明君は薄く微笑する。


その笑顔に、
私は息を呑んだ。


第一印象が少し怖かっただけに、
すごくふわふわした気持ちになる。



『えへへ、ありがと』



私は名前を褒められて
嬉しくなった。



これが、私と彼の出会い。


声のない会話。


画面をタップする音だけが響く会話。


でもそれは、
確かに私と彼の会話でした。