『全然へーき!明君こそ、風邪ひかないでね!また明日!』
虹心からの相変わらず元気な返信を見ると、
重たい玄関の扉を開けた。
本当、虹心は他人思いだな…。
僕なんかに、優しくしてくれるなんて。
『お帰り、ずいぶん遅いわね』
リビングで猫の世話をしていた母さんが、手話で迎えてくれた。
『うん。掃除だったから』
僕も手話で答える。
別に、母さんは耳が聴こえないわけでも、言葉が話せないわけでもない。
僕のために、手話を使ってくれているのだ。
『雨、大丈夫だった?かなり降っていたでしょう?』
母さんは、あまり濡れていない僕を見て、怪訝そうな顔をした。
『友達の傘に入れてもらったんだ』
友達…。
最近、その手話をよく使う。
なんだか、少し変な気分だった。