しばらく暴れる心臓をそのままにして歩いていると、
いつも明君と分かれる道へと差し掛かった。
ここで、お別れだ。
『じゃあ、また明日!私の家すぐそこだから、傘使って!』
私はそれだけLINEに書き残すと、
激しく地面を叩きつける雨の中、
施設へと向かって走った。
これ以上明君といたら、
私、何を言い出してしまうか…。
立ち去る時、
一瞬、明君が私を引き止めようとして出した手が、私の腕に触れた。
けれど、するりと通り抜ける。
「またね!」
しばらく走った先で明君に手を振ると、
返事も聞かずにまた走り出した。
自分の気持ちが、
うまくコントロールできない。
私はそんな歪なドキドキを抱えながら、
施設の玄関へと駆け込んだ。
そこへ、明君からのLINEが届く。
『ごめん、ありがとう。風邪ひかないようにね』
文末に、お辞儀をする猫のスタンプ。
あぁ…本当、変な気持ちだ。
私は、明君へ返信を打つと、
リビングへ向かって、ただいま!と声を上げた。