君に声届くまで。



それから、今は………。


「あっ、芹沢君!おはよー!」


希望の言葉に、
私は勢いよく顔を上げると、
廊下から教室へ眠そうに入ってくる明君の姿があった。



「明くーん!おはよー!」



私は大声で明君の名前を呼びながら手を振った。

あまりにも声が大きくて、
教室中から、ふふふっと笑いが溢れた。

途端に恥ずかしくなって、
顔が熱くなる。


明君に届かないことは分かってる。
だけど、どうしても名前を呼びたくなってしまって…。


明君は、うっすらと笑みを浮かべると、
小さく手を振り返してくれる。

大きいはずの背が、
少し跳ねた前髪と、猫背気味の背中で、
なんだか可愛くなってしまっていた。



───── そう。

今は、
明君もいてくれるから、
私は、すごく嬉しいんだ。


ふと、瞬をみると、
なぜだか、すごく暗い顔をしていた。

瞬は、私の視線に気づいたのか目が合う。


「…大丈夫?瞬」


「えっ?あぁ……」


一瞬びっくりした後、
また少し歪な笑顔に戻った。


「頑張れよ、体育」


そう笑う瞬の笑顔は、
どこかまだ暗かった。


そんな笑顔の理由を、
私はまだ知る由もない。