君に声届くまで。



「ったく、階段でコケる高校生がいるかよ…」


「いっ……たぁ……」


傷口に消毒液をつけると、
何かを訴えるように、虹心が涙目で俺を見つめてきた。


あぁ…ほんとにこいつは……。

俺は恥ずかしくなって無言で視線をずらした。


「落ち着いて行動しろよ…」


呆れつつ絆創膏を貼ってやると、
にっこり笑って、


「はーい」


と呟いた。

一番好きな笑顔を見せられてしまって、
もう俺は顔の紅潮を隠せなかった。



「んで、どれ?分からないとこ」


俺の机に向かう虹心に声をかける。
虹心は教科書を広げると驚きの言葉を発する。


「……へーほーこん…」


「えっ?平方根?ってか、それ中学の教科書じゃん」


虹心が開いていたのは、
明らかに中3の時に使っていた教材だった。


「だって…先生に中学の数学からやり直せって言われたんだもん…」


少しムッとしたように、
虹心が呟いた。

基本的に、虹心はアホだからな…。
数学は飛び抜けてアホだけど。


「お前ほんと、どうやって受験受かったの?」


俺は心底呆れながらも、
そんな虹心を可愛いと思いつつ
数学を教え進めた。