君に声届くまで。



「…了、開けるぞ」


ドアを軽く押すと、
軋む音と共に奥の空間が見えてきた。


真っ暗な部屋の中で、
異彩な光を放つパソコン。

その前で小さな背中をまるめる、
ヘッドフォンをつけた少年。


「また暗い部屋でパソコンして。ほら、飯だぞ」


ブチッとヘッドフォンのコードをパソコンから引き抜く。

その瞬間、ザザザ…という雑音が部屋に広がった。


「ッ…!また砂嵐か……。ほら、行こうぜ」


了はよく砂嵐を聞いている。

なぜだかは分からないが、
2年くらい前、こいつが施設に来た時から、ずっとこんな感じだ。


全然人と話したがらないし、
関わることもしたがらない。

まぁ、それも全部、了の置かれていた家庭環境のせいなのだが…。


「いい。いらない」


「だめだ。だからお前はちっせぇんだよ」



俺は140cmの中3男子を無理矢理立たせると肩に担いだ。


「お前、また痩せた?」


「おっ、降ろせバカ…!」


ばたつく了を軽々と担いで、リビングへ向かう。

そこには既に、綾子さんと園長夫婦の大人組と、虹心を含めた3人の子供組が揃っていた。


「あら〜、もう了が瞬に担がれてくるのが日課になってるわね〜」


園長夫人が、おしとやかにクスリと笑う。


「了にぃ、自分で歩けないの〜?」


小学生の杏がご飯粒を口の周りにつけたまま言う。


「黙れボゲ」


了は心底不機嫌そうに自分の席につく。

俺もそれを確認すると、
虹心の隣の席に腰を下ろした。