♪ ポロン ♪
「虹心ねぇ?ケータイなってるよ?」
「うん。三つ編み終わったら見るね〜」
お風呂から上がって、
同室の小学生、杏ちゃんの髪を三つ編みにしてあげていた時のこと、
突然スマホがメッセージの着信を知らせた。
「いいなぁ。杏もケータイ欲しい」
「高校生になったら、園長先生が買ってくれるって」
「えー、待てないよぉ〜」
「あっ!ほら、ちゃんと前向いて」
ぶー!っと私に向かって頬を膨らます杏ちゃん。
杏ちゃんは、
私以外の唯一の女の子で、
彼女がちょうど幼稚園の年少さんの頃、
お母さんと手をつないでこの施設にやってきた。
『すぐに迎えに来るからね』
杏ちゃんのお母さんは、
そう言って涙を流しながら杏ちゃんに手を振った。
結局、
杏ちゃんを預けてから一度も、
この施設に来ることはなかった。


