「あっ」
図書室を出ようとしたとき、
私は、ブレザーのポケットに違和感を感じて声をあげた。
左のポケットには、
朝からツッコミっぱなしのクッキー。
やば、渡すの忘れてた…。
テストのことで完全に意識がそっちにいっていた。
私が立ち止まったのに気づいたようで、
明君も不思議そうな顔で私を見つめていた。
「あっ、あのね、えっと……」
私は、ゴソゴソとポケットを漁る。
渡そう。
せっかく作ったんだもんね。
私はポケットからクッキーを取り出すと、明君に差し出した。
明君は、頭にハテナを浮かべる。
私は、明君にクッキーを半ば強引に持たせると、スマホで文字を打つ。
『昨日教科書貸してもらったし、これからも仲良くしたいなって思って、もしよかったら食べて?』
ブブーとバイブ音がして、
明君のスマホが震える。
明君は振動に気づいて、
スマホを見ると、すぐに返事をくれる。
『僕に?』
私はコクコクと頷く。
『気を遣わなくてもいいのに。でも』
私は次の文面を読んで顔をあげた。
見上げるように、
目の前に立つ明君を見つめる。
『ありがとう。嬉しい』
笑ったえくぼが、
すごく可愛かった。
あぁ、やっぱり、
明君は、
すごく、
優しい人なんだ。
心からそう思った。


