君に声届くまで。






「あれ?にこっち、それ男子の名札じゃない?」



「へ?」



希望に言われて、
私は両手の中に収まったマグネット式の名札に視線を下げる。



私の学校は、学期の初日、
教卓に置かれた自分の名札を
後ろの黒板に書かれた座席表の好きな席に貼るのがルールだった。


名前の色が男子は青文字。

女子はオレンジ色なのだけど…

私が手にしていたのは、青文字のものだった。



「あれ…?同じ名前の男の子がいるのかな…?同じ名前の人なんて会ったことなかったから、確認しなかったや」



私の苗字は芹沢だ。

少し珍しいのか、
17年間生きてきて、一度も出会ったことがなかった。



「ちょっと、戻してくるね!」



私は教卓に戻しに行こうと、
希望の元を離れた。