「おはよー、にこっち!めっちゃご機嫌だねぇ」



始業式の翌日。


希望より一足先に席についていた私は、
あくびを噛み殺しながら希望に答える。



「おはよう希望〜。えへへー分かる?」



「にこっち分かり易いもん!なにがあったの?」



希望が長身を丸めて私の方に身を乗り出してくる。



「明君にクッキー作ったの!なんか渡すこと考えたらワクワクしちゃって」



私が言うと、希望は訝しげな顔をした。



「いつの間に、芹沢君と仲良くなったの?」



「全然なってないよ!!仲良くなりたいなって思ってるだけで…」



私がそう言うと、
希望は、ふーん、と答えた。



「にこっちは、ほんとに人を放っておけないね。それがにこっちのいいところだ…」



希望の言葉に、私は目を丸くする。



「まぁ、人の事はいいけどさ、今日のテストは頼んだよ!」



キャラが変わったように突然明るく言った希望の言葉に、更に目を見開いた。



「テスト……?」


ナニソレ?



「えっ?昨日のHR聞いてなかったの?班対抗テスト。最下位だと図書室掃除1ヶ月だって」



椅子に座り直して、
なんでもないような顔で、
数学の教科書をペラペラとめくる希望。


班対抗テスト?


ナンデスカソレ……



「マジで聞いてないの?」



希望があんぐりと口を開けた。
まるで、こいつ大丈夫かしら、と言うように。



その時、隣でガタッと音がして、
黒髪長身が席についた。

明君だ。