君に声届くまで。

そんなことは最初だけ。

水族館に着いてしまえば、
いつもの距離感に戻っていた。


『見て、あれ』


明君が、大きな水槽を悠々と泳ぐウミガメを指さす。


『可愛い』


笑う明君は、
いつもとは違って少しだけ幼く見えた。


『カメが好きなの?』


私の問に、明君は静かに頷く。

カメが好きだなんて、
なんだか明君らしいかも。

私はクスリと笑う。


それから、私たちは館内を見て回る。

周りの騒がしさとは違って、
私たちの間には例の如く沈黙が流れる。


けれど、別にそれが嫌だなんて思わない。

ただ、隣に並んで歩くだけで、

会話なんてなくても、

声が聴こえないとしても、


私には、幸せだった。