「瞬〜?開けるよ〜」
「ええ!?あっ、ちょ、待って!」
俺は突然鳴らされたノックに驚きつつ、
机に広げられた雑誌を素早く片付けた。
別に、やましい雑誌なんかじゃない。
ほんとに、
やましい雑誌なんかじゃないからな!!
扉を開けてやると、
そこには、大量の布を抱え上目遣いに俺を見上げる虹心がいた。
「えっと……何?」
「洋服、選んで欲しいの」
虹心が手一杯に抱えていたのは、
過去に何度か見たことがある洋服だった。
虹心を部屋に招き入れ話を聞けば、
どうやら明日、明と出かけるらしい。
好きな奴が、俺以外の男と出かけるための洋服を選ぶなんて、
俺もほんとに、
人が良すぎる。
自分で自嘲するように笑った。
でもまぁ、
虹心が俺の気持ちなんて知るはずもないし、
ましてや、あの鈍感な虹心だ。
バレてたまるか。
虹心と明が付き合うからといって、
俺の虹心への気持ちは、
そんな簡単に収まるものじゃなかった。
だけど、自己嫌悪はもうやめた。
成宮は、いつだって俺を励ましてくれた。
だから、好きという気持ちは、
心の中に、そっと仕舞いこんだ。