「虹心、戻ろうか」
瞬が私の肩に手を置いた。
びくりとして、瞬を見上げる。
どのくらいだろう。
なんだか、長い時間、
了君の去っていく姿を見ていた気がする。
「了君、幸せになってくれるよね」
見上げた瞬の目が、
大きく見開かれた。
「ったりめーだろ」
瞬はくしゃりと笑うと、
私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「うわぁ!ちょっと、瞬!」
「ちょっとだけ〜」
ニッと口角を上げた瞬の顔は優しかった。
「暑ちぃから、部屋入ろうぜ」
1通り私の頭を撫で回して満足したのか、
瞬は私に背中を向けて施設へ歩き始めてしまった。
「あ!ずるい!待ってよ!」
私も瞬の背中を追う。
こうやって瞬の背中を追えるのも、
あと何回なんだろう?
了君の後ろ姿を見てなんだか、
私と瞬もいつか離れ離れになるのではないかと、
少し、
胸が痛かった。


