君に声届くまで。



了君と神崎さん夫婦が、
車に乗り込んだ。


ドアを隔てた向こうは、
なんだか別世界な感じがする。


違うのに。
そんなんじゃないのに。


「了兄ちゃん、手紙出すからね」


悠汰君の言葉に、
了君は大きく頷いた。


「待ってるよ」



私たちの間に、
夏のそよ風が吹き抜ける。

ふわりと、髪が揺れる。


「それじゃあ、行くよ」


旦那さんがみんなに声をかける。


その声で、
私はハッとして了君へ視線を戻した。



「ありがとう、みんな」



了君のその言葉に、
私は固まった。

了君が、
お礼を…。


「ありがとう、了君」


私は、了君へ伸ばそうとしていた手を止めた。

ダメだよね。
了君は、
大きな1歩を踏み出そうとしているんだから。

背中を、押してあげないと。


ゆっくりと動き始める車。

私たちは、ゆっくりと車を追った。