「そろそろ、行きますね」


園長たちと話していた神崎さん夫婦が、
私たちに声をかけた。


優しそうな旦那さんと、
しっかり者な神崎さん。


きっと、
了君は、大丈夫だよね。



「本当に、ありがとうございました」


深く頭を下げた神崎さん夫婦。


「こちらこそ、本当にありがとうございます」


瞬のその言葉には、
色々な意味が込められているようだった。


了君が、しっかり前を向けたこと。
了君が、幸せを掴もうとしたこと。

全部、全部、
神崎さんたちのおかげだ。


「いつでも、了君に会いに来てくださいね」


優しく笑う神崎さんに、
私たちは深く頷いた。



会えなくなるわけじゃない。
了君は、幸せに足を踏み出そうとしてるんだ。

そう思うけれど、
2年もの時を一緒に過ごしてきた"家族"との別れは、
どうしても、辛くて……。