先生は心配げに僕を抱きしめている。


僕は、震える唇を
ゆっくりと動かした。


「先生…僕は……」


"僕は"


「幸せに、なりたい……」



"母さん、父さんの分まで、幸せに"



「先生、僕は…」



"母さんが大好きだった僕でいられるような、暖かい、家族"




「家族が、欲しい……」




先生の目に溜まった涙が、
一気に溢れ出した。

それを見た僕の目からも、
涙が溢れた。


「了君っ……了君っ」


今までより、
強い力で抱きしめられる。


「先生…痛い……」



「了君……」


そのまま、
先生が離してくれるまで、
僕は先生の胸で涙を流した。


いつしか、
あんなに激しかった雨が止んでいた。


まるで、
前を向き始めた僕を
歓迎するかのように、

眩しいほどに、
空には虹がかかっていた。