僕がもしあの時、
母さんの手を離していなかったら、
もっと、
違う未来が待っていたのだろうか?
もっと、
僕は笑えていたのだろうか?
「ごめん……父さん、母さん…」
あの日から2年。
僕はまた、そんな言葉を口にする。
昔、祖父が死んだ時、
母さんが言っていた。
砂嵐が途切れると、
死んだ人と話をすることが出来る、と。
だから、僕は砂嵐を聞き続けた。
ただ、謝りたかった。
僕のせいで死んだ2人に、
謝りたくて。
自分だけが幸せになっていいはずがない。
ずっと、そう思ってきた。
僕にあったはずの未来、
父さんと母さんにあったはずの未来、
でも、今はもうない。
僕のせいで、
僕が2人を見捨てたから。
空を仰いでいた目から、
涙がとめどなく溢れてきた。
涙は、雨と混ざって地面に水溜りを作る。
その時、後ろから誰かに強く抱きしめられた。


