廊下は、悪夢だった。
逃げ惑う人と、熱い炎。
母さんは、僕の肩を強く抱いた。
「大丈夫、大丈夫だからね」
何度もそう呟く母さんの腕は、
ひどく震えていた。
僕が母さんを見上げたその時、
頭上から天井が落ちてきた。
逃げなきゃ、
そう思った時には、僕も母さんももうガレキの下敷きになっていた。
けれど、僕は母さんに肩を抱かれていたから、ほとんど無傷だった。
上に被さるように、
母さんが僕を守っている。
「お、お母さん…!!」
頭上でぐったりとする母さんの頬に手を触れる。
ビクッと母さんが動いた。
「了…出られる……?」
僕の肩に回っていた母さんの腕の力が、
少しだけ緩められた。
少しずつ身体を動かしていけば出られそうだった。


