「母さん…!」
「大丈夫。すぐにそっちに行くから」
大きな物音がして、
奥から傷だらけの母さんがでてきた。
「どうしよう、父さんが…!」
「了、大丈夫だから、早く外に」
母さんが、クローゼットと父さんを僕の上からずらす。
「パパ…」
変わり果てた父さんを抱き上げる母さんの呟きに、
僕は何も言えなかった。
ただ、頭が真っ白になって、
とにかく、母さんにすがりついた。
「了、行くよ」
父さんをベッドに横たえると、
母さんは僕の手を引っ張った。
「母さん、父さんは……」
「了、しゃきっとしなさい!男でしょう!?パパは大丈夫だから、逃げるの…!」
強く手を引っ張られた。
なんで、分かってあげられなかったんだろう。
一番悲しかったのは、
母さんのはずなのに。
僕の代わりに死んだ父さんは、
母さんの愛した人だったのに。


