気が弱かったけど、
僕の憧れだった父さん。

しっかり者で、
いつだって優しく笑っていてくれた母さん。


僕は、家族が大好きだった。
いつまでだって、
一緒にいられると思っていたのに。


中1の夏休み。
家族で海外へ旅行に行った。

そこで、災難なことに大きな地震にあった。

ホテルが全壊する程の、
大きな揺れと火災。

寝ていた僕は、
重さを感じて目を覚ました。


上に被さっていたのは、父さん。
その上には、クローゼット。

父さんは、倒れたクローゼットから僕を守るために、頭から血を流して横たわっていた。


「と、父さん…!」


何度呼んでも揺すっても、
父さんは動かなかった。

暗闇に目が慣れてきた時、
やっと、冷たくなり始めていることに気づいた。


「了…!了!」


めちゃくちゃになった部屋の向こう側から、
僕を呼ぶ母さんの声が聴こえた。